
南信州の秘境。日本のチロルと呼ばれる『下栗の里』に行ってきました。場所は、飯田市にある遠山郷というエリア。標高800mから1000mくらいの山肌に集落が形成されている日本有数の秘境です。ちなみに『チロル』というのはオーストリアとイタリアにまたがる山岳地帯にある地域のこと。本家アルプスの山岳地帯に集落が形成されています。
GoogleのCMで有名になった竹田城(兵庫県)もスゴいですが、こちらは実際に民家が建ち並んでいますからね。秘境集落という意味では、唯一無二の存在。つづら折れになった道路が通っているものの、閉ざされた地域というイメージが強く残ります。
そんな、急斜面の秘境『下栗の里』で民宿に泊まってきました。

民宿ひなた
泊まったのは『民宿ひなた』という宿。ひなたという名前のとおり、斜面に張り出したデッキからはサンサンと太陽の光が照りつけています。一泊二食付きで6800円。当然ながら、近くにコンビニ等はないので、必要なものがあればここに来る前に買っておかなければなりません。

夏にはデッキで食事ができたりするのだそう
基本は全て共同で使う
宿に入ると、宿主のおばあちゃんが迎えてくれました。忙しいときは近所の人に手伝ってもらいながら、基本は一人で切り盛りしているそうです。明るい方で、気さくに話してくれました。
廊下

部屋

お風呂

トイレと洗面所
トイレとお風呂、洗面所は共同。トイレは一応男女別れていますが、基本的に入口は一緒です。お風呂は少し広めではありますが、1つしかないので交代で入る感じですね。部屋には鍵などがなく、貴重品があれば常に身に付けておく必要があります。
僕が泊まった時は他にお客さんがいなかったので気になりませんでしたが、民宿慣れしていない人はちょっと抵抗があるかもしれません……。ただ、そもそもこういう秘境の中、皆で身を寄せ合って暮らす集落に、こちらが足を踏み入れているわけです。『共同』、『共有』の精神を受け入れることこそ、郷にいれば郷に従えということなんでしょう。これこそが、オモテナシ。
さすがにソフトバンクの4Gは入りませんでしたが、3Gなら携帯はつながりましたよ。
食事がとっても美味しい
宿につくとすぐお風呂を勧められ、湯船でゆっくり……。その後、部屋にいると「お風呂あがったらすぐ下りてきてよー!」と下から呼ばれました。おばあちゃんが一人でやっている民宿。お客とは言え、こちら側が合わせにいくことも必要なようです。
食事の部屋

夕食(ご飯とお味噌汁もつきます)
そして用意してもらった夕食。なかなかのボリュームでびっくりしたのですが、それより何より、美味しすぎる味に驚きました。完全に偏見ですが、田舎で出される和食って、中には苦手なものが必ずあります。でも、それが一切無いんです。全部ホントに美味しい。海原雄山でも間違いなく美味しいと言うでしょう。
「宿ノート」というものがあり、宿泊客がメッセージを残しているものを見ると、料理の美味しさを書いている人がかなり多くいました。料理に惹かれてリピーターになった人もかなりいるようです。何の情報もなく宿を選んだのですが、正直かなりラッキーでした。
というわけで、特に美味しかったものを記載しておきます。

この土地で穫れる『下栗いも』を使った、いも田楽

地元産の『山菜天ぷら』

おばあちゃん手作りの刺身コンニャク
中でも個人的にハマりまくったのは、この集落で採れるイモを使って作られた『刺身コンニャク』。鮮度たっぷりのイモを使い、おばあちゃん手作りのコンニャクはとっても美味しかったです。くせもなく、みずみずしく澄み切った味には衝撃を受けました。コンニャクってこんなに美味しいんだ。
なかなか海の幸を食べることが難しかった下栗の里では、海魚の代用として、刺身コンニャクをよく食べてきたのだそうです。ほんのりワサビを付けて食べると、お酒の肴としては絶品極まりないお味になります。あーーー、ココに来て良かった。
何もないけれど、それが良かった
夜ご飯を食べると部屋に戻ってテレビを見たりして過ごします。団体で来ていればある程度、小宴会になったりするでしょうし、他のお客さんがいればお話できたりするんでしょうけれど、基本は部屋で寝るだけです。あいにく曇っていたので星空は見えず、窓を開けると外には漆黒の闇が広がっていました。普段は深夜2時か3時まで起きている生活ですが、この日は22時頃眠りにつくことに。

朝ご飯

部屋からの景色
下栗の里は、最低限の観光整備がされていますが、基本は何もない場所です。宿場町のようにお店が立ち並ぶわけでもなく、一般的な夜の観光の楽しみは特にありません。なので、泊まりで来る場合も、山の下にある和田宿で宿泊したり、「あくまで下栗は昼間に立ち寄るだけ」という方が多いように思います。
ですが、泊まることによって分かるのは「ホントに何も無いんだ」という絶対的な実感。心の底から『都会の喧噪から離れる』という意味を理解できたような気がしました。地方へ行くと一言で言っても、最近ではコンビニやフランチャイズのお店も多く、旅の途中でWi-Fiポイントを探したりしがちです。そういう現代では当たり前のことが、当たり前に備わっていないのです。
究極の急斜面に開かれた秘境。たった一晩だけではありますが、ほんとに俗世間から切り離されたような感覚になれる夜でした。
せっかくなのでビューポイントへ
民宿ひなたから、つづら折れの道をグイグイ上がっていくと、天空の里ビューポイントへの入口が見えてきます。宿を出たあとは、早朝からビューポイントへと向かいました。
上の駐車場から徒歩15〜20分

ビューポイントです

ビューポイントからは下栗の里が見渡せます
CMやポスターに使われて、よく見かける構図。『下栗の里』に観光でやってきて、このビューポイントに行かない人は皆無だと思いますが、ぜひ訪れてみてください。
(参考)民宿 ひなた-長野県最南端の秘湯と秘境の里・信州遠山郷