
立山黒部アルペンルートの玄関口、長野県大町市には「ゲストハウスカナメ」という宿があります。
場所は、中綱湖のほとりで鹿島槍スキー場のすぐ近く。
JR大糸線「簗場駅」から徒歩5分の立地なのですが、これがまた、なかなかのど田舎なのです。広い信州、敢えてこの場所を選んで観光する人は少ないでしょうし、コンビニやスーパーはおろか、宿の周辺には店という店もない。
そんな場所の特性もあってか、ゲストハウスカナメでは、『泊まるために、泊まりに行く』という不思議な概念の宿泊が繰り広げられています。まだスキー場もオープンしていない11月下旬、実際に泊まってきました。
アクセスするだけで味わえるプチ秘境感…

JR大糸線の「簗場駅(無人駅です)」
最寄りの「簗場駅」があるのは、中綱湖という湖のほとり。
中綱湖は、青木湖と木崎湖と並んで仁科三湖の一つで、ワカサギやヘラブナ釣りで訪れる人もいるのだそう。
無人駅の「簗場駅」を出て、集落がある方向に歩いて行きますが、一緒に駅に降り立ったのは僕1人で、駅周辺を見ても人の姿はありません。集落があるので「秘境」というのは変なのですが、普段東京に住んでいる僕からすると、この時点でかなりのカルチャーギャップを感じます。

こんな道を歩き

中綱湖を見ながら進んでいくとすぐに集落に到着します
このあたりは、鹿島槍スキー場のふもとに位置するので、集落では民宿が軒を連ねています。ただ、スキー場の規模感からいうと、白馬村や小谷村、志賀高原、野沢温泉と比べると小さいので、割とこじんまりと営業している雰囲気でした。

「ぶす子の店」どんなブスがいるんでしょう?

悪い告発をされるように、現在地の標高を知らされました

レギュラーで放送していた「田舎へ泊まろう」のロケ地までPR
ちょっとお茶目な看板を見ていると、やがて「ゲストハウスカナメ」に着きます。
最寄り駅の改札を出てからの所要時間でいうと、長野県内のゲストハウスで最も駅から近いんじゃないでしょうか。(長野駅近くの『森と水バックパッカーズ』も近いんですけど、改札からだとそこそこ歩くんですよね)
古民家を改修したゲストハウス

これがゲストハウスカナメです

玄関
建物自体に、「ゲストハウスカナメ」という文字もないですし、目立つ看板もないのでちょっと場所がわかりにくいかもしれません。目印は玄関にある暖簾と立て看板だけなので、もし訪れる人は頑張って探してみましょう。

寝室は相部屋で和室
ゲストハウスということで、部屋は全て男女分かれた相部屋。料金は1泊4850円と、ゲストハウスとしては少し高めですが、これには2食分の料金も含まれています。まわりに飲食店やスーパーがないので、宿の中で食べるしか選択肢がないんですね。
ただ、1泊2食付きで4850円はなかなか破格のお値段ですが、ちょっとからくりがあるので、食事については後述します。
この宿は、一般の方が使っていた民家を改修して運営しています。
建物の中を見てみると、いろんな面白い小物と出会えました。

玄関に傘が飾ってあったり

家紋が書かれた提灯箱(西澤というのは家主の名前だそうです)

懐かしの黒電話

縁側もありますし

ゆっくりくつろげる談話室もありました

レトロな洗面台

ちょっと洋風なシャワーヘッド
ちなみに、Wi-Fiが飛んでいて、自由に使えるので現代っ子も安心。
地上波を受信できるテレビは無いですが、スーパーファミコン専用のテレビは置いてありました。
ドライヤーやシャンプー、ボディソープはあるけれど、パジャマや寝間着は持参しなければなりません(タオルや歯ブラシは販売していました)。
この辺は、一般的なゲストハウスと同じ。
ご飯はみんなで作る
僕が宿泊した日は、ゲストが3名(全員、1人で来ていました)。
この宿では、スタッフさんを含めて泊まっている人全員で食事を作り、みんなで一緒に食べるというルールがあります。
食材は、宿の人が事前に買ってくれているので、出来る範囲で何を作るか決めて調理へ。(この食材代が宿泊費に含まれているってことなんですね)

18時半頃から料理がスタートしました
これまで、ゲストハウスに泊まっても、晩ご飯は飲食店に行くのが習慣になっていたので、宿でご飯を食べること自体が新鮮。さらに、その日に出会った人と一緒に料理をするというのも、なかなか出来る経験ではないので、これも新鮮でした。
まるで親戚の家に行って、従兄弟たちと会っているような感覚。ほとんど里帰りのようなものですね。
ちなみに、僕が行った日は、たまたま現役のシェフが一緒に泊まっており、すごく美味しいご飯を作っていただきました。ラッキーすぎる。

鶏肉とニンニクと野菜をからめたパスタを作ってもらいました
たぶん、ここまで美味しい料理が出来上がるのは奇跡に近いと思いますが、そういう奇跡も起こりうるのがゲストハウスカナメの良いところなのかもしれません。

お酒は勝手に冷蔵庫から勝手にとって、ざっくり料理をカンパするシステム
ご飯と一緒にお酒を飲んでいると、その日出会ったばかりの人なのに、自然と仲良くなれます。その日に集まったメンバーによっては、みんなで車に乗って温泉に行こう!と言うノリになったり、夜風に当たって散歩しようということが起こるようです。

もちろん、朝ご飯もみんなで作って食べます
こうして、泊まること自体を楽しむために宿泊するのが、ゲストハウスカナメの過ごし方。正直、車が無いとここを拠点にアチコチ巡るにはちょっと不便ですし、回りにコンビニがないのは便利とは言えません。でも、不便だからこそ、1夜限りのコミュニティが生まれ、思い出ができるのはとってもステキですね。
朝の散歩もオススメ!

中綱湖に朝霧が出ていました
どの季節も共通だと思いますが、中綱湖がすぐそばにあるので朝の散歩が最高に気持ち良かったです。この日はたまたま朝からよく晴れていて、朝霧が出ていたので、湖周辺が幻想的な雰囲気に包まれていました。

『何もないけど、たくさんの何かがある』とか言いたくなります
そして、集落を散歩していると……

犬!
まだまだ、オープンしてから1年も経っていない「ゲストハウスカナメ」。まだまだこれから少しずつ変化を遂げて行くと思いますが、とっても落ち着いて良い感じの宿でした。
思わぬ出会いがあるかもしれないですし、一人旅には特にオススメですね。都会から行けば、山と湖と集落という要素自体にも、絶対に刺激を受けると思います。ぜひ、思い立ったら、宿へ行ってみてください!
そうそう。常駐しているスタッフの「ちゃけさん」は、とっても愛嬌があってかわいいので、女子でも安心して宿泊できると思います。男子は、「ちゃけさん」目当てで行ってみるのも良いかも!?
長野大町ゲストハウスカナメ*山と湖と集落のお宿