
本来「POST」と表記されるべき場所に、「LETTER」と書かれています。
一般に「レターポスト」と呼ばれるもので、もちろんオモチャではなく、現役のポスト。長野県塩尻市の贄川(にえかわ)郵便局に設置されています。実はこれ、同様のものはこれを含めて日本国内に“3つ”しかありません。かなりのレアポストなのです!!
他には、香川県善通寺市と千葉県白井市に一つずつ。すごいレアなポストが、何の脈絡もない3つの地に存在していることもなんだか不思議ですね。ちなみに展示品となっているものなら、新潟県内にもあるらしく、現役稼働しているのが日本で3つということらしいです。

贄川郵便局
以前から、存在は知っていたのですが、いかんせん贄川という場所がなかなかマイナーで、行く機会が無く……。しかしこの度、松本市に用事があったので、わざわざコレを見るためだけに松本駅前でレンタカー(写真に写ってる軽自動車)を借りて、贄川まで来ることができました。
ナビに登録すると、松本ICから塩尻ICまで高速に乗るルートを告げられ、まんまと高速に乗せられた(普通は国道で走れば十分な距離)。ちょっと損した感があるけれど、レアなポストを拝むためなら全然良いのさ。
そんな、念願だったLETTERポストですが、来てみると小雨が降っていてカメラが濡れるものだから、写真を撮って早々に引き上げることに。夢にまで見た光景ほど、いざ目にすると呆気なかったりします。シンガポールでマーライオンを見た時の感覚と酷似していました(そう、あの時も雨が降っていた!)。

凛々しいLETTERポスト
元々このポストは、1949年(昭和24)に誕生した丸型ポスト(正式名称、『郵便差出箱1号(丸型)』)の試作品と言われています。
郵便事業が始まり、日本にポストが誕生したのが1871年(明治4)。当時は木で作られていて「書状集箱」と呼ばれていたそうな。それから時を経てポストには「POST」と表記されるようになり、鉄製のものになっていくのですが、物資が不足した戦時中はコンクリート製のものが設置されたのだとか。
そして、戦争が終わり、落ち着いた頃に生まれたのが『郵便差出箱1号(丸型)』という、通称丸型ポスト。その試作品として、1948年(昭和23)8月頃から1949年(昭和24)2月頃にかけて製造されたものには、LETTERと記され、そのいくつかが日本国内に設置されて稼働し始めたのだそうです。

ここから手紙を取り出すみたい
ただ、試作品も計画段階ではPOSTという表記だったらしいのですが、郵便事業用品改善委員会というものが開催されていて、そこに参加していたGHQ関係者が「表記は、LETTERかMAILにせよ」と指示したのではないか……(?)と言われています。
ただし、このあたりのことは古い議事録が幾つか残っているだけなので、ハッキリとはよく分からないまま。試作品の製造が終わり、丸型ポストが本使用になった時には表記がPOSTに戻っています。後にも先にも、日本のポストでLETTERという表記がされているのは、これだけ。

裏側はツルツル

取集時刻が直接印字されています
ポストの歴史って深いんですね。
ちなみに「贄川」という変わった地名ですが、元々は温泉が湧いていたので「熱川」と書いて、にえかわと呼んでいたのだそう。しかし、温泉が枯れた後、近くの神社で神事を行う際に『御贄(おにえ)』として、この地で捕まえた魚を差し出していたことから、御贄の贄をとって、「贄川(にえかわ)」と表記されるようになったのだそうです。
贄川郵便局の近くに、「贄川関所の跡地」があり、そこにいた係のおばさんに、地名の由来を教えてもらいました。
参考文献:戦後初の新規格郵便ポスト「1号丸型」の試作から完成まで(PDF)