
牛に引かれて善光寺参りと言いますが、何気にどういう意味なのか、どういう背景があったのか知らない人も多いのでは?なので、ちょっと分かりやすく、その伝記を綴ってみようと思います。
昔、長野の「小県の里」に、器のちっちゃいお婆さんがいました。
そう、この人が主人公です。
ある日、軒下に布を干していると、牛が一頭やってきたかと思うと、角に布を引っ掛けて走り去ってしまいました。お婆さんはスゴク腹を立てて、「何してんの?てか、布を盗んでどうするの?」と、怒りながらその牛を追いかけました。
結構な事件が勃発します。牛が激走してるわけですからね……。
当然ながら、牛の逃げ足は早く追いつきません。
そりゃそうだ。というか、牛に逃げる意識があるのかも怪しいです。
まるでお魚くわえた野良猫を追いかけるサザエさん状態で、とうとう善光寺の金堂前までやって来てました。あんまり長い時間追いかけているものだから日は沈みかけ。牛の姿もよく見えなくなってしまいました。
日没まで追いかけたってことは、主人公のお婆さんは、なかなかの走力のようです。
その時!仏さまが光りはじめ、お婆さんをピカピカに照らしました。お婆さんは「何コレ!」と思ったのですが、ふと足下を見ると牛のよだれが垂れています。それを見て「めっちゃ、よだれ垂れてんじゃん!」と、お婆さんは、怪訝そうにつぶやきました。
なかなかのファンタジーが巻き起こります。
でも、よく地面を見ると、よだれで文字が書かれていました。一文字ずつ拾っていくと、「うしとのみ おもひはなち そこの道に なれをみちびく おのが心を」と、読めました。
今風に翻訳すると、「あんまり邪魔くさく思わないでね。あんたを仏さんの前まで連れてきてあげたんだから」という意味。それを見たお婆さんは、仏様を信じて、欲するようになりました。しかも、その夜は一晩中、如来様の前で念仏を唱えながら過ごしたんです。
仏の光スゲー!
っていうか、よだれで書かれた文字を解読したお婆さんスゲー!

お婆さんは、布を盗まれたなんて怒りは、すっかりどこかに飛んでしまいました。その後は、まるで悟りを開いたように、「この世は素晴らしいなぁ」、「生きてるって良いなぁ」、みたいなことを考えるようになったのだそうです。
改心。
ある日、お婆さんは近くの観音堂をお参りしました。すると足元に、あの時の布が落ちているではありませんか。
布 キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
その布を見て、お婆さんはピーンと来ました。「あの時の牛は、この観音堂の菩薩様だったんだ!」お婆さんは、それから更に善光寺の仏様を信じて、めでたく極楽往生を遂げました
布を見るまで気付かんかったんかい!!
とは言え、『牛にひかれて善光寺』というフレーズは、この話から由来しています。正確に言うと、牛を追いかけて善光寺ですね。しかも、牛に布を捕られて全力疾走するほど怒るって、なかなか怒りの沸点が低い人だったようで。